今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。3巻 感想 ネタバレあり
今回も引き続き「おさいも」の感想を書いていきます。
ネタバレありで感想を書いていくので、まだ未読という方はご注意ください。
今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。3 3年分の「ありがとう」だよ、先輩(著者:涼暮皐 イラスト:あやみ)
それではいきますね。
伊織が認識できないかつての友達の名前と露天商の少女の名前は生原小識と同性同名。伊織に正体がばれた小識は今まで隠してきた事実について伊織に説明する。
「自分は偽物である」
彼女の口から語られるかつての関係。眠り続ける小識を救うために伊織は小識とともに夢の世界へ。
あらすじはこんな感じです。
今回の巻はこれまでの伏線がいくつか回収された巻であり、伊織が忘れていた記憶についても触れられる重要なストーリーになっていました。
今までの二巻がハッピーエンドで終わっていたわけですが、決して誰もが笑える幸せな結末ではありませんでしたね.......何となく予想できていただけに後半はずっとつらかった。
まずは生原小識について。
これまでに登場していた小識は、星の涙によって作り出された本物の小識の一部の人格。伊織の隣に自分がいることを許すことができなかった小識の人格でした。
もともと小識は伊織たちと同じ小学校にいた一人。引っ込み思案だった彼女にとっては伊織はたった一人の友達であり、唯一信頼できる相手。彼女は伊織が星の涙をつかったことによりいじめの対象として代わりになってしまった人物でもあります。星の涙を使ったのはそんな過去が原因でした。
正直、本物の小識の過去にはつらく共感できるところもありましたが、眠ったあとに生み出された小識のほうにすごく感動しました。
彼女は伊織の隣に自分が立つことを許せなかった。だからこそ伊織の隣に立っていられるようにかつて言われた強くそしてクールな性格を演じ伊織をサポートしてきていました。もうそれだけで泣けますよね。いつか消えると分かっていても伊織の隣にいることで感じる幸せは大きくなっていき。そして伊織にとっても大きな存在になってしまって。自分が存在することが伊織を傷つけてしまうという彼女の悩みが本当に伊織に対する強い思いを感じて。
小識が伊織に思いをぶつけるシーンは涙がこぼれました。あの展開はほんとにずるい.......泣かないわけない。
また今回は舞台が小識の夢のなかで、現実ではあり得ることはない出来事が起きました。
それが流希との出会いと陽星との出会い。伊織にとってどれだけ幸せで同時に残酷な時間だったか。伊織が一番取り戻したいものがそこにはあり、けれどもそれは受け入れてはいけないものでもあり。かつての2人と伊織が過ごした時間が想像できて、だからこそ今の伊織を見ると読み手としてもつらく感じました。
そして今回は小識の出来事以外でも、最後に衝撃の事実が明らかになりました。
陽星は自ら星の涙を使用した。
前回の感想で伊織は星の涙に感情を奪われたのではなく自分から感情を抑えていると書いていましたがしっかり間違っていました(笑)
今までも伊織に感情の熱がともったときに急激にその温度が冷えていくという描写がありたしかに星の涙の影響といわれるとすごい納得。
しかしこうなってくると更なる疑問がたくさん出てきます。
まず陽星が星の涙を使ったという前提で話を整理していきますね。
こうなると陽星が得たものは偽りの関係によりいじめられなくなった世界。そして差し出したものは自分の伊織に関する記憶。こう考えるとここはすんなり納得できます。
ただこうなると伊織の根底を覆すことになりますよね。伊織が背負っていた責任は実は勘違い。もしくは星の涙による記憶改変のせいで。伊織が2番目に大切にしていたのは決して他人からの自分への思いなんてものではなかったということですよね。
そして伊織が星の涙の干渉を退けることができるのは実は星の涙の力のおかげ。
ではその対価はなにか。伊織のこれから先に起こる感情のすべて。
陽星のために使ったわけではないのならきっと伊織の願いはこっちが本当ということになると思いますが少し違和感がなくもないんですよね。
そもそもなぜ伊織は星の涙の干渉を防ぐことを願ったのか。誰かが星の涙を使いその影響を受けたがために二度とそうならないことを望んだというのが一番濃厚な理由でしょうか。
いろいろと可能性はありそうですが、そもそも伊織の認識を改変するために誰かが一度星の涙を使ったことは間違いなさそうですよね。
また幕間では遠野が与那城に星に涙を預けていたこと。そしてそれを再び取り戻しに来たことが明らかになっています。間違いなくキーになる遠野ですが彼はかつてこの力に頼ったことがあるのか、そしてナナさんとの関係も気になりますよね。
星の涙の記憶改変のおかげでかなり複雑に絡み合っている物語ですがそれがこの作品の面白さですよね。単調なストーリーではなく、様々な可能性が残されていて考察の予知があるのがすごくいいなと思います。
伊織が何を願ったかわからない以上、もしかすると流希の死も星の涙が関係していたりするのでしょうか。どっちにしろ、流希は大きなカギを握る人物だと思うのでそこら辺の謎が明らかになるのをこれからも楽しいに待ちたいと思います。
3巻は小識との物語で涙あり笑いありの物語が紡がれていました。そして同時にこの物語の1番のキーである星の涙についてもいろいろ語られた巻でもありました。
ここからストーリーがどのように展開していくのか。3巻が去年の10月発売だったのでそろそろ4巻の発売もあるのかな?続きが気になるので楽しみに待っていたいと思います!
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んで下さったかた、ありがとうございました。