ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5巻 感想 ネタバレあり
今回は本日発売されたひげひろの最終巻を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
ネタバレありで感想を書いていくので、まだ未読というかたはご注意ください。
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5 (著者:しめさば イラスト:ぶーた)
ついに家に帰る決意をした沙優。それに付き添う形で吉田もともに実家へと同伴する。
過去を乗り越えるために。そして一歩前に進むために。
沙優だけでなく吉田にとっても大きな意味を持つ北海道への帰省。
奇妙な出会いから始まった二人の関係にいよいよ終わりが……
ということでひげひろの最終巻読み終えました!
長らく見守ってきた吉田と沙優の関係。その終わりはどう終わるのか。期待とさみしさが混ざった心境で読み始めたわけですが、個人的には大満足の終わり方でした。
作中でずっとテーマになっていた沙優の過去。それは一番の友達の自殺と家族との関係。その部分に沙優が一つ一つ向き合っていく姿は心が痛たむ……
女子高生が抱えるには大きすぎる苦悩。
それに対して吉田とともに乗り越えていくのが良かった。一人だとくじけそうでも吉田がそばにいるから立っていられる。吉田が直接的に手を貸すわけではないけど、それでも沙優のために大切なときに言葉をかけてあげる。
今までの吉田と沙優の関係が意味のあったものだと感じられるこのシーンはひげひろを追ってきたからこそグッとくるものがありました。
そして読んでてしんどかったと同時にあってよかったと思ったのが沙優と母親のやり取り。沙優のもう一つのトラウマである母親との関係をしっかり描いてくれたので沙優の苦しさがより感じられて物語に深みが感じられたように思います。
またここで描かれた母親像は一見どうしようもない悪であるように見えるんですが、視点を変えれば母親にも辛い過去があり。自分が抱える悩みを解決できないで子供にあたってしまうというのは同情できる余地もあるわけです。
ひげひろを通して描かれていることの一つとして大人の未熟さでもあるんですよね。
吉田であれば自分の正義感を信じてまっすぐに行動してはいるけど、沙優との関係に若干逃げてしまう節があり。
後藤さんであれば自分の気持ちを表すのに怯え、常に相手を待ってしまうところがあり。
沙優を女子高生として「子供」と描く半面、大人も同様に完全ではなくもろい部分があると描かれているように思えます。
沙優の親もその例の一つで、母親になったからといえ完璧な大人になれるわけではなく、今回の一件のように前に踏み出すことで成長するものであると伝えてくれるような感じがしました。
それにしても5巻のお兄さんのやさしさがすごい。常に沙優のことを考え、沙優を大切に思うからこそ何もできなった自分と違い沙優を導いてくれた吉田に心から感謝すると同時に少し嫉妬があり。荻原家は間違いなくゆがんだ家庭だけど、それでも思いやりや家族への愛というものはあったと感じられお兄さんがますます好きになりました。
場面が移って最後の場面について。
吉田と沙優の別れ。いつか来ると分かってたけど実際に読んでると胸がチクチクするような苦しさがありました。
この場面では沙優のほうが大人なんですよね。吉田との別れをさみしく思いつつも、吉田との関係に自分なりの答えを見つけ、伝えたい言葉吉田に伝える。
それに対して吉田は、沙優との別れはこの先の別れだと思い、沙優の前で最後まで気丈にふるまう。
吉田はあくまで沙優に対して大人であろうと接し続けたのは良かったかも。
二人が別れた後、それぞれの描写があったのですがそこもたまらなかった。
沙優は吉田と別れた直後に分かれた寂しさに涙を流しそれでも前を向いて吉田に会いに行くことを誓っていて。
吉田は沙優がいなくなった部屋に帰ってから初めて本当の寂しさを感じる。
この部屋にかえってからってのがすごく良い。吉田と沙優の思い出はやっぱりこの家に詰まっていて。二人の時間が。大切な毎日が。沙優とのすべてが詰まった部屋で沙優がいない寂しさに暮れる姿をここで描いてくれたのはほんとに天才的だと思う。
ここまでですでに泣けていたわけですが、最後の最後。エピローグではあれから3年後の世界が描かれていて。
電柱はやばいって(泣)二人の奇妙な関係が始まったこの場所でこの素敵な物語の完結が迎えられる。
この瞬間「ああ、この作品終わるんだな……」って改めて感じてあとがきでボロボロ来ちゃいました。ほんと最後まで大満足です。
そんなこんなでいろいろ書いてきましたが、最後の最後まで本当に楽しませてもらえました。ニヤニヤや笑い、感動や苦しさ。いろんな感情を味あわせてくれたこの素敵な物語を書いてくれたしめさば先生、そしてこの物語に花を咲かせてくれたぶーた先生に感謝を。本当にありがとうございます。そしてお疲れさまでした。
では今回はこの辺で。最後まで読んで下さったかた、ありがというございます。