シュレディンガーの猫探し2 感想 ネタバレあり
今回はガガガ文庫刊行のシュレディンガーの猫探しの2巻を読み終えたのでそちらの感想を書いていきたいと思います。
今回もネタバレありで感想を書いていくので、まだ未読という方はご注意ください。
シュレディンガーの猫探し2(著者:小林一星 イラスト:左)
ではいきます。
今回の舞台は主人公の令和が通う東高で七夕に開かれる文化祭。
文化祭の直前、令和たち東高の生徒は夜空から落ちてくる謎の光、そしてその先に残された「東高五十面相」を名乗るものからの予告状を発見する。
くしくもその東高五十面相はかつて飛鳥が起こした東高二十面相を真似した模倣犯であり。
模倣事件を迷宮入りにするために、対して犯人をみつけ謎を解き明かすために。焔螺と令和対高校生探偵や安楽椅子探偵を巻き込んだ勝負が始まる。
ざっくりとしたあらすじはこんな感じです。1巻のときにも感じましたが、この作品は自分にすごくあった作品だなと思います。ミステリー要素もありながらキャラクター達の心情、そして成長もしっかり描いていて一冊を読んだ満足度がかなり高い。
また謎を明かす探偵ではなく、謎を謎にする魔女たちの視点から描いてくれるので普通の謎解きとも違う楽しみ方もできて面白いです。
今回は特に1巻では描かれなかった令和と弥生の内面を深く描いてくれていたと思います。飛鳥が起こした一連の事件は彼らにとって確かに呪いとして刻まれていて、それぞれがそれぞれの覚悟を持ちその呪いに立ち向かう姿が印象的でした。
飛鳥の死に一人で向き合っていた令和が、学校の仲間やそして焔螺と手をとり歩みを進めたシーンはかなり胸が熱くなりました。
令和が弥生を心配する理由もすごく理解ができて。飛鳥が死んでから笑顔しかなくなった弥生。その笑顔しかないある種無表情である弥生を救うために奔走していたという展開も個人的に良かったかなと。
そしてそれに対して弥生も呪いに対して自分一人で姉の名誉を晴らそうと頑張っていて。読んでる最中にもしかしたらと思わせる描写も、まさに太陽や令和と同じような気持ちになれて感情移入しやすかったです。
飛鳥が死んでから幼いままだと思っていた弥生も令和と同じように確かに成長していて、もう兄に守られているだけの妹ではなくなっていて。それどころか自分自身で飛鳥の死と向き合う強さがあって。
兄と妹の2人の気持ちが少し切なくそして温かくなりました。
弥生といえば太陽も今回はかっこよかった。高校生探偵は一巻では焔螺に手玉に取られたまだまだ子供といった印象を受けていたけど、今回の話でかなり高感度上がりましたね。彼にも探偵としてのしっかりとした矜持があり覚悟を持って探偵をしているのが良かったですね。
ほかにも今回は新しいキャラ達も登場し、その全員がいいキャラをしていました。令和が言うにはみんながみんが変人で、それでも令和にとって頼ることができる相手であり。この友情が美しくそして羨ましいなんて思ったりもしましたね。
あとはタマ子もよかった。というか新キャラでは一番好きです。
令和や弥生、そして飛鳥と以前から関係がある人物で飛鳥の死から少し距離が置かれていたタマ子。立ち位置的には二人を見守る親といったところでしょうか。常に二人を心配していて二人の成長を見守ってあげている姿にグッときました。
彼女の令和に向ける気持ちはやっぱり恋心なのかな。だとしたらなんか切ないですね。令和を見ていたからこそ、彼の横にいるのは焔螺と分かってしまう。うん……恋愛方向でも泣けるかもしれない。
そして最後には今まで超常的な現象の種明かしみたいなものがありました。飛鳥が起こした事件の真相、魔導書の法則、そして弥生トリップのロジック。また今まで令和の身の回りで起こった事件のもう一つの仮説。
令和の底知れない度胸とそしてそこまでして弥生のために尽くしてあげようという気持ちの大きさには感動します。最後の焔螺との近いも個人的には最高な描写だったかと。
最後は猫又村という芥川の生まれ故郷について語られたところで終わりました。一巻に続き二巻でもその謎が深まった芥川に深くつながる話が描かれそうな三巻。かなり楽しみです。
それでは今回はこの辺で終わります。
最後まで読んで下さった方。ありがとうございます。