ホラー女優が天才子役に転生しました2 感想 ネタバレあり
前回に引き続き「ホラー女優が天才子役に転生しました」の2巻を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
ネタバレありで感想を書いていくので、まだ未読というかたはご注意ください。
ホラー女優が天才子役に転生しました~今度こそハリウッドを目指します!~(著者:鉄箱 イラスト:きのこ姫)
それではいきますね。
空星つぐみとして子役仲間たちと触れ合うなかで様々な問題が浮かび上がってくる。珠里阿が抱える家の問題。美海が抱くつぐみへの嫉妬の感情。またつぐみはつぐみで友達との友情、そして家族から受ける愛情に触れ合うなかで桐王鶫と空星つぐみの人格の境界があいまいになっていき……
2巻は前回の巻では深く掘り下げられなかった子どもたちの抱える問題が一気に解決される巻となりました。
悪い役に頑なな拒絶反応を見せる珠里阿の母親の真相。それはかつてサラとして悪役の女優として売れてしまったために桐王鶫にとらわれ家庭でも問題が起こったという不遇な過去がありました。
ここら辺は演技の世界を経験したことがある人ならかなり共感できる問題だったのですかね。親として珠里阿の将来を心配するあまり本当に子どものことを見ることができなくなっていた。互いを思う気もちは同じなのにすれ違う親子は見ていてじれったく、だからこそその後の2人はほほえましいものがありました。
そしてこのシーンでつぐみが見せた演技。役に入り込み狂気的な行動をとるつぐみには鳥肌。その場の空気感が本を超えて伝わってくるようでその丁寧な描き方はさすがの一言。
また美海の話では自分より才能がある人に向ける嫉妬の感情。そして友達に対してほの暗い感情を抱く自分に対する嫌気。友達を奪われたような寂しさ。いろんな感情が渦巻き思い悩む美海の心情をしっかりと描いてくれていました。
この作品は主人公はもちろん星天つぐみなんですが、つぐみに関わる人達の心情も丁寧に描いてくれているのが魅力の一つかなと思います。周りのキャラにも感情移入させてくれるからこそつぐみの魅力もより一層輝いているような気がします。
そして美海のエピソードで強調されていたのがつぐみと鶫。今回の巻は冒頭では今まで通り「私」。けれども徐々に「わたし」と一人称が変化していったんですよね。
つぐみとして生きていく中で周りの愛を受け入れていく中で今までしまい込んでいた「つぐみ」の人格が徐々に出てき始め二人の境界があいまいになっていく様子が描かれていました。
美海を救うため再び鶫としての意識がつよくなって今回は終わりましたが、凛が気にするように本来の人格であるつぐみは苦しんでいるとしたら。
今までタイトルの「転生」という言葉に引っ張られ、元のつぐみとしての人格はなくなってしまっていると思っていたので、この展開は予想外のもので面白かったですね。
星空つぐみの本来の人格が望むことは何なのか。この辺りは今後の展開に期待ですね。
今回は鶫とかつて関わってきた人たちの動きも描かれていました。桜花に閏宇、そして最後の男。全員が全員桐王鶫に妄執を抱き歪な愛を向け続けているように思えます。それほどまでに彼女の存在は大きかったのでしょうか。
桜花は凛に対して接触し演技の才能を開花させよう稽古をつけ始め、最後の男もCM対決に一枚嚙んでいたりと怪しい動きが増えてきました。
今後子どもたちを巻き込んで繰り広げられる桐王鶫の後継者争いが裏で行われそうで怖いですね……鶫に異常な執念を見せている人たちは子どものことを考えてなさそうで不安になります……
また途中で出てきたよーちゅーばーのツナギ。つぐみが見て感じた謎の既視感。そして凛がいったつぐみに似ているという発言。子供ながらにつぐみと同じく落ち着いて計算された話し方をするツナギは明らかに何かある存在っぽいですよね。
鶫以外にも転生者がいたりするのかな?
つぐみの周りを引き込み自分の世界を作り出す才能。そしてその演技にあてられることで成長していく周り。演技のことはよくわからない自分でもなぜか自然と引き込まれるような感覚がこの作品の自分が好きなところです。
今後は鶫とつぐみ。その両方に影響を受け周りがどんどんと動いてくると思うので、何が起こるかわかないドキドキ感を胸に楽しみに続きの巻を待っていたいと思います。
それでは今回はこの辺で。最後まで読んでくれたかたありがとうございます。