とうかのブログ

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サンタクロースを殺した。そして、キスをした。 感想

 どうも、久しぶりです。今日はガガガ文庫から刊行されたサンタクロースを殺した。そして、キスをした。についての感想を書いていきます。

 

サンタクロースを殺した。そして、キスをした。(著者:犬君雀 イラスト:つくぐ)

 

 では早速あらすじのほうから。

 

 聖夜を間近に控えた12月初旬。先輩にフラれた僕は駅前のイルミネーションを眺め、どうしようもない苛立ちと悲しさに震えていた。クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに……。そんな僕の前に突如現れた、高校生らしい一人の少女。「出来ますよ、クリスマスをなくすこと」彼女の持つノートは『望まない願いのみを叶える』ことが出来るらしい。ノートの力で消すために、クリスマスを好きになる必要がある。だから――「私と、疑似的な恋人になってください」これは僕と少女の奇妙な関係から始ます、恋を終わらせるために物語。

(裏表紙から引用)

 

 

 表紙とあらすじを見て買うことを決めたこの作品。ラノベというよりメディアワークスなどで刊行されてそうな恋愛ものなのかなと思い購入しました。

 あらすじからも分かるようにこの作品は特別なノートの力があり、少しSF要素を含んだものとなっています。そして当然このノートが重要な役割になるのですが、「望まないことのみを叶える」という部分をとてもうまく使い素晴らしい物語展開になっていました。

 作品を通して流れる空気感。それは決して恋愛ものに見られる明るいものではなく、常に薄暗い空気が漂っているような印象を受けました。しかしその中での僕と少女の何気ないやり取り。最初こそ合わない二人が徐々にいい距離感になっていく様子は、キュンキュンするというよりは美しい。幸せな生活ではない中の些細な幸せ。そのようなものを丁寧に描かれていました。

 この物語は登場キャラは多くはありませんが、僕と悪友、僕と先輩、また少女との関わりが丁寧に描写されていて、キャラたちの複雑な感情の機微を楽しめる作品です。

 自分の中ではここ最近読んだ一巻ものの作品の中では一番好きな作品で、空気感、キャラ、ストーリーすべてが刺さりました。まだ未読の方で購入を迷っている方、きれいな恋愛が好きな方はぜひこの本を手に取ってみてください。

 

 

 

 

 

 

ではここからは本編の内容に深く触れていくので、まだ未読の方はご遠慮ください。

※ネタばれあります

 

 最初読んでいるときずっと疑問だったのが少女が主人公を呼ぶとき「犯罪者さん」と呼ぶこと。読み進めているうちに、僕が元カノの彼氏を殺す計画を立てていたからだと分かりますが、実際は犯罪は犯していないんですよね。この時は深く考えなかったことでしたが、終盤一度目の出会いがあり、そこで犯罪者さんと呼んでいたことがわかったときは鳥肌がすごかったです。記憶をなくしてもなお、二人はどこかでつながっていて、それが最初にでたのが犯罪者さんという呼びかた。この作品は登場人物の名前は誰一人出てきません。それがさらにこの犯罪者さんという呼び方に特別感を与えているような気がします。

 

 作品を流れる空気感については上でも書きましたが、その最たる理由はやはり少女の辛すぎる過去でしょうか。親から虐待をうけ、学校ではいじめにあい、最愛の姉はクリスマスに自殺してしまう。そんな辛い出来事を経験した少女にとって僕との出会いは悲しい中の幸せだったのだと思います。望まないことしかかなわないノートという一見意味のなさそうなノートから始まる辛いけど優しい本当にきれいな物語でした。

 

 こういった作品は涙なしでは見れなく、とてもすきなジャンルなのでこういった作品も増えていくことを期待してます。