ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5巻 感想 ネタバレあり
今回は本日発売されたひげひろの最終巻を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
ネタバレありで感想を書いていくので、まだ未読というかたはご注意ください。
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5 (著者:しめさば イラスト:ぶーた)
ついに家に帰る決意をした沙優。それに付き添う形で吉田もともに実家へと同伴する。
過去を乗り越えるために。そして一歩前に進むために。
沙優だけでなく吉田にとっても大きな意味を持つ北海道への帰省。
奇妙な出会いから始まった二人の関係にいよいよ終わりが……
ということでひげひろの最終巻読み終えました!
長らく見守ってきた吉田と沙優の関係。その終わりはどう終わるのか。期待とさみしさが混ざった心境で読み始めたわけですが、個人的には大満足の終わり方でした。
作中でずっとテーマになっていた沙優の過去。それは一番の友達の自殺と家族との関係。その部分に沙優が一つ一つ向き合っていく姿は心が痛たむ……
女子高生が抱えるには大きすぎる苦悩。
それに対して吉田とともに乗り越えていくのが良かった。一人だとくじけそうでも吉田がそばにいるから立っていられる。吉田が直接的に手を貸すわけではないけど、それでも沙優のために大切なときに言葉をかけてあげる。
今までの吉田と沙優の関係が意味のあったものだと感じられるこのシーンはひげひろを追ってきたからこそグッとくるものがありました。
そして読んでてしんどかったと同時にあってよかったと思ったのが沙優と母親のやり取り。沙優のもう一つのトラウマである母親との関係をしっかり描いてくれたので沙優の苦しさがより感じられて物語に深みが感じられたように思います。
またここで描かれた母親像は一見どうしようもない悪であるように見えるんですが、視点を変えれば母親にも辛い過去があり。自分が抱える悩みを解決できないで子供にあたってしまうというのは同情できる余地もあるわけです。
ひげひろを通して描かれていることの一つとして大人の未熟さでもあるんですよね。
吉田であれば自分の正義感を信じてまっすぐに行動してはいるけど、沙優との関係に若干逃げてしまう節があり。
後藤さんであれば自分の気持ちを表すのに怯え、常に相手を待ってしまうところがあり。
沙優を女子高生として「子供」と描く半面、大人も同様に完全ではなくもろい部分があると描かれているように思えます。
沙優の親もその例の一つで、母親になったからといえ完璧な大人になれるわけではなく、今回の一件のように前に踏み出すことで成長するものであると伝えてくれるような感じがしました。
それにしても5巻のお兄さんのやさしさがすごい。常に沙優のことを考え、沙優を大切に思うからこそ何もできなった自分と違い沙優を導いてくれた吉田に心から感謝すると同時に少し嫉妬があり。荻原家は間違いなくゆがんだ家庭だけど、それでも思いやりや家族への愛というものはあったと感じられお兄さんがますます好きになりました。
場面が移って最後の場面について。
吉田と沙優の別れ。いつか来ると分かってたけど実際に読んでると胸がチクチクするような苦しさがありました。
この場面では沙優のほうが大人なんですよね。吉田との別れをさみしく思いつつも、吉田との関係に自分なりの答えを見つけ、伝えたい言葉吉田に伝える。
それに対して吉田は、沙優との別れはこの先の別れだと思い、沙優の前で最後まで気丈にふるまう。
吉田はあくまで沙優に対して大人であろうと接し続けたのは良かったかも。
二人が別れた後、それぞれの描写があったのですがそこもたまらなかった。
沙優は吉田と別れた直後に分かれた寂しさに涙を流しそれでも前を向いて吉田に会いに行くことを誓っていて。
吉田は沙優がいなくなった部屋に帰ってから初めて本当の寂しさを感じる。
この部屋にかえってからってのがすごく良い。吉田と沙優の思い出はやっぱりこの家に詰まっていて。二人の時間が。大切な毎日が。沙優とのすべてが詰まった部屋で沙優がいない寂しさに暮れる姿をここで描いてくれたのはほんとに天才的だと思う。
ここまでですでに泣けていたわけですが、最後の最後。エピローグではあれから3年後の世界が描かれていて。
電柱はやばいって(泣)二人の奇妙な関係が始まったこの場所でこの素敵な物語の完結が迎えられる。
この瞬間「ああ、この作品終わるんだな……」って改めて感じてあとがきでボロボロ来ちゃいました。ほんと最後まで大満足です。
そんなこんなでいろいろ書いてきましたが、最後の最後まで本当に楽しませてもらえました。ニヤニヤや笑い、感動や苦しさ。いろんな感情を味あわせてくれたこの素敵な物語を書いてくれたしめさば先生、そしてこの物語に花を咲かせてくれたぶーた先生に感謝を。本当にありがとうございます。そしてお疲れさまでした。
では今回はこの辺で。最後まで読んで下さったかた、ありがというございます。
探偵はもう、死んでいる。5巻 感想 ネタバレあり
少し遅くなりましたが、今回は5月25日にMF文庫から刊行された「探偵はもう、死んでいる。」通称たんもしの最新刊を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
ネタバレありで感想を書いていくので、まだ未読というかたはご注意ください。
探偵はもう、死んでいる。5 (著者:二語十 イラスト:うみぼうず)
それではいきます。
シエスタを取り戻すためシードに挑んだ君塚達。それぞれが試練を乗り越え成長した状態でシードに挑んだ彼らだったが、待っていたのは残酷な結末。斎川をさらわれ、シャルは大けがを負い、そして夏凪は死んでしまった。
そんな再び相棒を失い絶望の淵に立たされた君塚のもとに届いたのは一通の手紙とそしてかつての相棒。
一度は死に別れた名探偵と再び仲間を取り戻すために立ち向かう。
過去と現在が絡み合ったSPES編の完結巻。
ということでたんもし5巻を読み終えたわけですが。。
まず表紙がかっこよすぎる!
読み始める前、このイラストが公開されたときから期待がすごかった。シエスタと君塚のたたずまいがかっこよすぎて。しかもしかも、なんでこの二人が銃を向けあってるのか。このイラストだけで発売前から興奮が止まらなかったわけですよ。
このイラストって読み終わると意味が分かってさらにエモさがますわけですがその辺は後でたくさん語らせてもらいますね。
読み終わった率直な感想を言えばめっちゃよかった!
SPES完結編ということでこの物語にどのような結末がもたらされるのか期待していたわけですが、バトル描写だけでなく、キャラクターの心情を大切に描いてくれていたのがすごくよかったです。
たんもしといえばシリアスな展開はもちろんなんですが、シリアスの中にも絶対に日常的な笑えるようなニヤニヤさせられるようなパートがあり、今回もそんなところもしっかりとこれまで以上に描かれていて大満足です。
またこれまでのストーリーを思い出させてくれるような描き方がされていて、4巻までのストーリーがあったからこそ感じられるストーリーの重みというかキャラたちの心情の重みというか。そんなキャラたちの心からの思いを感じられるからこそ、何度も心を動かされたし熱くさせられました。
ではここからは内容に触れながら書いていきますね。
なんといってもまずはVSシードの話から。
私的にはこの話をこの巻の最後まで引っ張ると思っていたので、かなり序盤から展開が動き出して驚きでした。えっ!こんな早くからシード出てくるの!?って感じ。
でもでも読み終わってみれば納得の展開。しかもシードが序盤に出てきたからといってその内容があっさりしていたわけでもないんですよね。
ご都合主義でもなんでもいい。ヘルとシエスタの共闘は良い!
かつてともに幼少期を過ごした夏凪とシエスタ。そして夏凪の第2の心臓の持ち主であるアリシア。口絵のイラストがやばい。ここにきてアリシアが関わってきたのがまず驚きでした。それこそたんもしでずっと言われていた<意志>を受けつぐということ。3人の出会いからはじまっていたこの壮大な戦いに、意志をつなぎ戦ってきた。そんな強い思いを感じられる場面ですごくよかった。
場面が変わってシードが終わってからのパート。この部分でかなりグッとくるものがあったんですよね。
その部分が君塚とシエスタの日常場面。2巻の過去エピで描かれていた出会いからそれまでの冒険譚を思い出させてくれるような、二人の何気ないやり取り。ピザの出前をとったり、二人で飛行機で飛び回ったり、ホテルに泊まったり。失ってしまった時間を取り戻すように、失ってから気づいたこのかけがえのない時間を大切にするかのような二人のやり取りはやっぱりグッとくる。2巻の最後でシエスタの思いに触れているからこそこのパートはほんとによかった。
そしてこの日常のなかに所々で挟まれていたシエスタの焦り。楽しいはずの時間なのにも関わらず、嫌な胸騒ぎがするこの感じ。これもやっぱりたんもしらしい。
しっかりと張られた伏線に毎度毎度驚かされますね。
またこのとき、今後につながる人物たちが登場してきましたね。調律者の面々の情報開示。そして君塚の特異点という体質。怪盗アルセーヌについて。今のところは大きな動きはないですが、今後6巻以降で重要な役割を果たす人物たちなのは間違いなし。
ここら辺は今後に期待です。
いろいろ書いてきましたが、なんといっても一番大事なのはもちろん最後のところ。
シエスタと君塚が戦う理由。これが表紙のあのイラストにつながっていたわけです。
ほんと辛い。
シエスタは自分の種がいずれ暴走することを分かったうえでシードと今まで戦ってきた。そして再び生き返った今、今度は君塚達の思いを理解したうえで、彼らを思い死を選ぼうとする。
シエスタの思い、そして君塚の思い。互いが互いを思うゆえに戦いは読んでて心が痛かった。どっちが正しいとかじゃないんですよね。お互いに相手をなによりも大切に思うからこその選択だからこそなのであって。
そしてこの戦いでいつも冷静なシエスタが熱くなるんですよね。自分の漏れ出る思いとそれでも冷静に物事に対処しようとする名探偵としての責務と。その葛藤が本当にうまく描かれていたと思います。
シエスタの差し出すてはいつも左手だった。そして君塚に向ける銃をもつ手もやっぱり左手で。改めて表紙みるとやばいよ……
夏凪とか斎川とかシャルについても書きたいことはあるんですが、シエスタと君塚の関係が良すぎたので今回はこの2人に絞って感想を書かさせてもらいました。かなり感情がごっちゃになり、文章にまとまりがなくなってしまいましたが、その点はほんとすみません。うまく言葉にできないところがたくさんあったので……
最後シエスタは永い眠りについたわけですが、それは決してバッドエンドによる眠りなわけではなく。今回の巻でよく目立った対比の表現。君塚が起こした行動により様々なことが変化したことが感じられてものすごくいいなと思いました。
SPES編に一区切りがついたわけですが、いまだ解決できていない問題はたくさんあり今後の展開に期待したいです。7月にはアニメもありますます盛り上がるだろうたんもしをこれからも応援していきます!
パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。 感想 ネタバレあり
今回は5月にガガガ文庫から刊行された新作、「パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。」を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
感想はネタバレありで書いていくので、まだ未読というかたはご注意ください。
パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。 (著者:持崎湯葉 イラスト:れい亜)
主人公の梶野了はお隣さんのJK香月乃愛がパパ活しているところを仕事帰りに目撃する。梶野はちょっとした正義感から乃愛に対し、パパ活していることを周りに言われたくなかったら犬の散歩をするように要求する。
仕事が忙しく犬の散歩をすることができなくなっていたアラサーサラリーマンの梶野了と、少し達観したわけあり女子高生の香月乃愛の送るドタバタラブコメディ。
ということで。こちらの作品は最近よくある女子高生×サラリーマンもののお話。
こういう作品についてくるのは女子高生のほの暗い過去であったり、犯罪と隣合わせの関係に思い悩まされたりといった重めのストーリー展開。
しかしながらこの作品、それらの作品と比べると非常にポップで軽快なやり取りで文章が紡がれていてなかなか印象的な作品でした。登場人物たちがなんともいえない残念感(誉めてます)がありそこがこの作品の面白いところ。
パパ活JKの乃愛は30歳以上の男にしか興味がなく加齢臭を好む重度のにおいフェチ。
隙あらば梶野のにおいをかぐため梶野に近づきにおいを堪能。
正直言ってもう手がつけらない感じがかなりつぼりました(笑)
フェチを扱った作品はそこそこ見かけますが、これをパパ活JKと合わせてきたのがかなり新鮮でした。内容自体はシリアスになるところもそれまでの変態具合がやばすぎてどこかシリアスになりきってない感じも個人的には良かったかもです。
他にもしっかりJSのえみりちゃんの恋愛観のバクりかた。会社の後輩日菜子さんの脳内ツッコミ。
「胸を……いえおっぱいを借りるつもりで」
ほんと何言ってるのって思いましたよ(笑)途中までまともな後輩キャラだったのに徐々にぼろが出始める感じ。かなり笑わせてもらいました(笑)
と、ここまではギャグ作品かよと思うくらい笑える部分について語りましたが、もちろんJKとサラリーマンの温かい関係についても描かれていました。
乃愛は過去のトラブルから学校にいる同級生を「子供」扱いしまったくなれ合おうとしていませんでした。しかも親とも関係はあまりよくないようで、その寂しさを埋めるためにパパ活を行っていたよう。乃愛はパパ活の怖さはあまり理解しておらず、ただの暇潰し程度にしか思っていない。
そんな様子に手を差し伸べたのが梶野です。彼は大人の怖さを教えるために乃愛に対して脅迫じみたことを提案し二人の関係はスタートするわけです。
この出会いは乃愛にとっては非常に大きなもので、今まで自分らしく振舞うことができなかった彼女にとっていてもいい場所。今まで味わえなかった大切にされているという感じを味わうことができるなくてはならない場所になっていくわけです。
謹慎により梶野の大切さを感じ、同様に梶野も乃愛がいたことによりにぎわっていた空間に居心地のよさを覚え。二人ともが互いに大切に思う気持ちがいつしか出来上がっていた。
ここらへんはやっぱりありがちな展開になってはしまいますが、やっぱりいいものですよね。築いてきた関係の大切さに気付く場面は温かい。
そしてタイトルにもある「パパ活」が大きな問題になるのが最後。
パパ活のお得意さきであった吉永さんが乃愛のもとに押しかけてきます。
今までやさしさを見せていたのはやはり裏があり、乃愛が本当の意味で大人の怖さを知る場面。
やっぱり出てきました。胸糞展開。
問題JKにはつきものになる悪い大人の存在。
梶野が行った救出劇はスカッとする爽快感がありなかなか良かったです。
乃愛が事前に仕込んでいたとは言え「大切な人」といったのは良かった。
この二人の奇妙な関係に一つ定義がなされた瞬間。
乃愛にとっては梶野が初めて言葉にしてくれた自分に対する気持ち。
こういう作品は大人側がJKとの関係をどう定義するかに悩む展開が長く続くものが多いので割とスパッと決めてくれて主人公に好感が持てました。
1巻を読んだ感じでは全体的にコメディー要素が強く笑える作品という印象が強かったです。ただ一つ気になるのがこの先物語が続くとして「パパ活」とうい要素がもうなくなってしまうのではということ。今回パパ活については一区切りついてしまったので、そうなるとタイトルがお飾り感が出てしまうのではと若干気になりますね。
1巻では乃愛の家族まわりについてはあまり描かれていなかったので今後はそちらを扱っていくのかな。
何にせよ個人的にはこの作品すごい笑かせてもらってキャラクターたちも魅力的に感じたので続刊も追っていきたいと思います。
それでは今回はこの辺で。最後まで読んで下さった方ありがとうございました。
ぼくたちのリメイクVer.β3 感想 ネタバレあり
今回は7月にアニメ放送も決まっているぼくたちのリメイクのifストーリであるβ3を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
ネタバレありで感想を書いてくので未読という方はご注意ください。
ぼくたちのリメイクVer.β3 (著者:木緒なち イラスト:えれっと)
茉平常務に一矢報いてBCCという新たなゲームメーカーにてプラチナ世代と再び企画を始める恭也達。新しいゲーム会社の社長はアパートの管理人をやっていた伊地川というサプライズはあったものの、大きな問題がなく順調に企画は進んでいく。
しかしその裏で恭也たちに報復をたくらむ茉平常務の動きがあり……
恭也たちと茉平常務の戦いにいよいよ決着!
ということでぼくリメの本編のIFストーリーにあたるverβシリーズの第3巻。
この3巻でβシリーズは完結ということになってしまいましたが、最高の巻を仕上げてくれたと思います!
話したいことがあるので順を追って書いていきますね。
茉平常務に一矢報いることに成功した恭也たち。恭也たちを受け入れてくれたのは伊地川さんで会社での待遇もなんの問題もなし。おまけに移籍に伴う問題にも事前に対応していたおかげで目立った妨害はないという最高のスタートを切ることができました。
まあだからこそ不穏な空気はずっとあったわけですが……
それでもクリエイターたちとともに最高のゲーム作りをできることに恭也や河瀬川をはじめとしたメンバーが活気づいていました。
この段階ではいたって平穏そのもの。河瀬川と伊地川さんの弁当のくだりなんかはすごい笑えました(笑)
河瀬川は本編でも素直になれないところがあってそれでも懸命にアピールしてるところはほんとに可愛いですよね。βを読めば読むほど河瀬川を好きなる。
そしてこの段階から本編ではおなじみの貫之、シノアキ、ナナコのプラチナ世代が大きくかかわってくることになります。恭也が芸大に行かなかった世界線で築き上げられた彼らのきずな。彼らだけの思い出。
本編を読んでるからこそこのありえたかもしれない過去に思いをはせる面々にはグッときますよね。何より恭也が関わらなくても成功している三人だけど、恭也がいたからこそ起こっていたイベントの数々があったということが本編を読んでる身からしたらすごくよかったです。
場面が飛んで貫之が後れを取り戻しこのまま順調にいくと思われたとき。
ここでまたしてもあの男がやってきました。
茉平常務が貫之がミスクロのシナリオを流用することを見越して、そのシナリオで先にゲームをリリースしました。
恭也が鉢谷と話をつけているときから嫌な予感はしてましたがほんとに最悪のタイミングでしかけてきますよね……
一度は止まりかけた企画にゴールが見えてきた瞬間の絶望。これにはさすがの貫之も降板を選ぶことに。貫之だけでなく今までずっとこの企画を支えてきた九路田も休職を選んでしまいます。
このときの貫之の言葉がほんとにつらい。自分たちクリエイターは使われるだけの存在なのかもしれない。
全力で創作活動に命を燃やしてきたのにも関わらず、自分の意思とは関係なく今までのものをなかったことにされてしまう。この絶望がどれほどのものか。
またすべてを失うことになった恭也の前に現れた茉平常務。
彼がゲーム作りに対して抱く感情の大きさ。そして何が彼をそうさせてしまったのか。茉平が何を思っているのかはわからなかったですが、自分はそれでもゲームを作るのをやめないと宣言する恭也。
しかしすべてを失ってなにができるかもわからず途方に暮れる恭也は秋葉原のショップに踏み入れます。
そしてここで恭也に再び火をつけたのがシノアキ。彼女の画集に恭也の思いが届いていたこと。そしてTwitterに投稿された一枚の絵。
やっぱり背中を押すのはシノアキでした。本編でもそしてスピンオフでもシノアキの良さは変わらない。シノアキのあのイラストは挿絵もあり破壊力がすごい。曇っていた世界に日差しが差し込んできたかのようなそんな希望の光のようなイラスト。
そしてここからが橋場恭也の見どころ。快進撃。
何度心を折られようともゲームを愛するその気持ちで立ち上がる。
生配信で語った彼のゲームに対する思い。そしてそれに火をつけられたみんな。
クリエイターものの良さここにあり!といわんばかりの熱すぎる展開に鳥肌が止まらなったです。なんていうか言葉一つ一つが胸に来るっていう感じがするんですよね。
色々なしがらみがあって動くことができてない人たちに、気持ちだけで進むことの美しさを伝えてくれるようなそんな感じ。
発売日もスタッフも会社もお金も。何も決まっていない。あるのは作るという意思だけ。それでもその意思が周りに火をつけていく。
恭也まじでかっこいい!
そしてそして。会社を辞め0からスタートすることを決意した恭也についてきたのはほかでもない河瀬川。
正直河瀬川ルートがほんとに実現するなんて思ってなかった。だからこそめちゃくちゃ嬉しかったですね。ヒロインとしての魅力はもちろんなんですが、恭也の隣にたつ人物として河瀬川ほどふさわしい人がいないんじゃないかってレベル。
とにかく最後のシーンは河瀬川ファン必見。まじで最高でした!
ながながと話ましたがまとめに入りますね。
このβは本編にとってはスピンオフ的な物語。けれどほんとでいえば本編こそがありえたかもしれないもう一つの世界を描いたIFストーリーなんですよね。
上でも書きましたが本編で恭也がやってきたことは大きな影響をみんなに与えていたと思わせてくれる描写が3巻ではいくつもありました。シェアハウス北山のメンバーでゲームをつくることはなく。九路田のライバルとして立ちふさがる人物はおらず。プラチナ世代のメンバーをまとめ旗を振る人物はおらず。ほかにも竹那珂さんは恭也がいなかったからサクシードでバイトをすることもなく芸大に進まなかった。
本編で描かれた恭也がいたことによって変えられてしまった歴史。でも恭也がいなかったら生まれることのなかった歴史もたしかにあったと感じさせてくれるものがβには詰まっていたと思います。
だからこそ本編はβがあってさらに輝く話だと思うし、βは本編があるからこそ輝く話だったのかなと思います。
βで大きく壁となった茉平常務の過去は今回は明かされなったですがこれは本編で芸大の恭也が解決してくれるからでしょう。茉平さんがああなってしまわないように恭也がどんな活躍をするのか。
βは学生とは違い社会の厳しさをよりリアルに描いてくれていて本編とは違った面白さがあるわけですが、本質のクリエイターものの熱さはどちらにも間違いなくありだからこそ読んでて背中を押してもらえる。
βはこれで完結ですが、本編はまだ続くのでそちらを楽しみにしていきたいと思います。
それでは今回はこの辺で。最後まで読んでくださったかたありがとうございます。
現実でラブコメできないとだれが決めた?3巻 感想 ネタバレあり
今回はガガガ文庫から刊行されているラブだめの3巻を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
ネタバレありで感想を書いていくので、まだ未読というかたはご注意ください。
現実でラブコメできないとだれが決めた?3 (著者:初鹿野 創 イラスト:椎名くろ)
それではいきますね。
生徒会選挙。ラブコメの世界では様々な物語が生まれる学校行事の一つ。
そんなチャンスを逃すことなく、耕平はこのイベントに向けて計画を進めていた。
日野春幸を生徒会長にする。
これまでの生徒会の活動、そして過去に行ってた実績。それらを踏まえて生徒会長にふさわしいと思われる日野春幸の選挙活動を支えるため上野原と準備を進めていたが、予想外のことに日野春幸は生徒会長に立候補をせず……
日野春幸が生徒会長に立候補しない理由を突き止めるため今回も耕平が動き回る。
ということで今回のヒロインは生徒会役員の先輩である日野春幸。
これまでの話ではまだ謎多き先輩として登場していた彼女の抱える悩みについて描いてくれていました。
理想と現実
3巻を一言で表すとしたらきっとこれになるでしょう。
日野春先輩は高校に入るまでは自分が楽しいと思うことに全力で、周りも巻き込んでまっすぐ突き進むある意味耕平に似た人物。そんな彼女が高校に入って味わうことになる挫折。自分の掲げた理想についてくる人がいなくなってしまった孤独感。
立ちどまったことで周りと自分の温度差に気づいてしまう。
高校で夢見た最高に楽しい時間を作るための活動は周りの人は求めていない。
それに気づき自分を曲げたら周りから受け入れられるようになってしまった。
日野春先輩が抱える悩みは子どもが大人になる過程で味わうものの一つ。
現実を見る。周りに合わせる。そうすることで円滑にヒトと関われるようになる。
どっちが正しいといえるわけでないのがまた何とも言えないですよね。
読者の多くが共感できるところを扱っていたんではないでしょうか。
そして今回もそんな現実的な悩みをぶち壊してくれたのが耕平です。
耕平も理想を掲げそれに向かって走り続ける一人。だからこそ日野春先輩の心を動かすことができたんでしょうね。
清々しいほど大馬鹿で純粋な耕平はなんだかんだかっこいいんですよね。周りが見えてないとかそういうのじゃなくて、理想に向けて全力だからこそ暑苦しくても愛せるキャラ。
耕平の活躍で悩みが吹っ切れた日野春先輩は本当に楽しそうで。しがらみから解放されて耕平とともにまっすぐ進んでいく彼女の魅力はやばかったですね。
おっとり先輩もよかったけど、こっちの先輩も最高。
なんだかんだ日野春先輩を救い出し、全力でラブコメすることに成功した耕平たち。
ページ数も残りわずかで今回もハッピーエンドで終わり。
と思わせての最後の展開。
まさかのどんでん返しに驚きですよね。読んでる最中なんど手が止まったことか。
3巻の清里の行動は表立ってない分不気味に感じられていたんですが本当にえげつない爆弾仕込んでいましたね。
塩崎先輩の不信任。そして中学校で生徒会長をやっている大月さんへのバッシング。日野春先輩の新しい挑戦を含めた生徒会選挙で起こった出来事への批判。
「「「「「「「現実をみようよ」」」」」」」
最後のページの使い方がえげつなすぎる。
ただのハッピーエンドで終わらせないのがこの作品っていう感じでとにかく引きが毎回やばいんですよね。
この作品ラブコメを作り出すという設定ながら主人公がやっていることは普通にラブコメなんですよね。
じゃあなにが違うかって、それに対する周りの目があること。
普通の作品なら主人公たちの周りで起こっていることに対してほかの一般生徒が何かを思うことってないんですよね。
ただこの作品はそこが違う。「現実」だからこそ普通であることの圧力が働く。「現実」だからこそほかの人と違う行動は異分子扱いされる。
最後の展開はこの世界観を最大限に生かした絶望だったなと思いますね。
今回は最後の展開が怖すぎてそっちにどうしても目が行ってしまうわけですが上野原さんが個人的には良かった。
上野原は耕平と過ごす中でどんどん自分が普通であることを強く感じてしまう。
共犯者であり幼馴染という枠がなくなれば自分は普通の人。
それが嫌だからこそ耕平に協力していたのに、どこまで行っても自分が普通から抜けれないことに嫌気がさしている。そんな彼女の葛藤が様々な場面で描かれていました。
上野原が今後耕平と関わるなかで揺れ動く葛藤をどう乗り越えるのか今後にすごい期待したいです。
最初から推してるヒロインだからぜひぜひ頑張ってほしい。
そんなわけで今回は日野春先輩と耕平の熱い青春をかき消すような最後の展開にぞっとする恐怖を植え付けられて物語が終わってしまったわけですが、今後どのような展開が待っているのか。最後の展開によって日野春先輩たちにも再びどんな影響があるかもわからないのでほんと次の巻が待ち遠しいです。
色々書きましたが今回はこの辺で。読んで下さったかたありがとうございます。
経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。その2 感想 ネタバレあり
前回に引き続き、経験済みな~の第2巻を読んだのでそちらの感想を書いていきますね。
ネタバレありで感想を書いていくので、未読の方はご注意ください。
経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。その2 (著者:長岡マキ子 イラスト:magako)
それでは行きますね。
今回は交際から1か月を経た二人のひと夏の思い出を描いてくれていました。
1か月記念の江の島旅行にテストのための勉強会。夏休み前にはすれ違いがありながらも最後には月愛のひいおばあちゃんの家で生活。
いろいろなことを経験し二人のきずながより深まった心温まるいいストーリーだったと思います。
二人の距離感がたまらなくよかったです。月愛は男経験がありいろんなことに慣れているのに、普通のカップルがやるようなことは経験できていない。その心の穴を埋めるように龍斗の初々しい行動が月愛にとっては新鮮でかけがえのないものになっていく。
一見アンバランスに見えなくもないのに、この二人は見ていて砂糖が吐きたくなるくらいピュアでまっすぐな恋愛をしていてほんと最高ですね。
なにより月愛が本当に可愛いんですよね。チャラチャラしているように見えてものすごく純粋で龍斗の言葉に一喜一憂して。すぐに嫉妬しちゃうところもいいし、龍斗のまっすぐな言葉に照れるとこも最高。
ギャップを最大限に生かして月愛の可愛さを全面に押し出す作者さんほんとにすごいなって思います。
また月愛とは別に海愛も今回は良かったです。
この子も個人的にすごい好きでだからこそ切なかった。思い切った行動に出たほど龍斗に対する気持ちが大きくなっていたことを考えると報われてほしいと思ってしまいました。
最初は月愛への嫉妬の感情もあったと思うけど、気持ちは間違いなくほんものだったんですよね。
こういう恋愛もの読むとどうしても報われないヒロインに思い入れしてつらくなってしまう……
個人的に今回1番良かったのは最後の夏まつりのところでした。
月愛が龍斗との祭りで涙を流した場面は胸が熱くなったもそうなんですけど、この作品のタイトルを回収したような話ですごくお気に入りです。
1巻を読んだ段階では「経験済み」というのが男性経験を指しているものだと思っていたのですが、このときの月愛の発言から考えると男性経験を含めた「付き合う」行為そのものだったのかなと思います。
彼氏と一緒に出掛ける。手をつなぐ。プレゼントを贈りあう。一緒に花火を見る。
それらすべてのことを以前の彼氏で経験してしまっている月愛。
かたや初めての彼女でなにからなにまで初めての龍斗。
タイトルが表していた経験っていうのはそういった行為だったのかなと思った瞬間、このタイトルがすごくふかいなって思いました。
また龍斗が返した返事も龍斗なりの男らしさがあってよかった。
今までいろいろな経験をしている月愛だけど、同じようなことをしていても龍斗としかできなかったことが今までもいっぱいあったわけで。
今まで自身がなく弱々しいところもあった龍斗が一歩成長した場面でもあり印象深かったです。
二人のピュアで甘々な恋愛模様はずっと見ていたいです。
2巻にしてものすごくきれいにまとまった感じはあったから続編があるのかすごく気になりますね。もしあるなら別に特別なことはない二人で過ごす時間などを描いてくれる話があったら嬉しいかな。
それでは今回はこの辺で。読んで下さったかたありがとうございました。
経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。1 感想 ネタバレあり
今回はファンタジア文庫から刊行されている「経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。」の第1巻を読み終えたのでそちらの感想を書いていきます。
感想はネタバレありで書いていくので、まだ未読という方はご注意ください。
経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。(著者:長岡マキ子 イラスト:magako)
それでは行きますね。
主人公の加島龍斗はいわゆる陰キャ。友達も少なく彼女いない歴年齢の男子高校生。龍斗はある日友達との罰ゲームで好きな人に告白することに。龍斗がひそかに思いを寄せている女子は学年1の美少女と呼ばれるスクールカースト上位のギャル白河月愛だった。記念告白のような気持ちで投げやりに思いを告げる龍斗だったが、月愛はあっさり受け入れる。
恋愛における価値観が異なる二人が送るピュアさ全開のラブコメディー。
普段自分はいわゆる甘々系ラブコメというものは読んでいなかったのですが、この作品めっちゃよかったです。
主人公の龍斗はラノベの主人公でよくいるようなこれまでの経験のなさから自身が持てない男の子。だからこそ女子との付き合い方が初心でお互いの気持ちを優先して恋愛をしたいと考えていています。
対して月愛はこれまでに何人の男とも付き合ってきたが、全員長続きはしない。相手を一途に愛し、相手の望む女の子であろうとする女の子。付き合って初日でもえっちすることに戸惑うことのないそんな恋愛観を持っています。
そんな恋愛の価値観が異なる二人が最初は戸惑いながらも、徐々にお互いに惹かれあっていく姿はニヤニヤが止まらないです。
何が素晴らしいってヒロイン月愛のまっすぐすぎる純粋さ。付き合った相手にならなんでもして上げれてしまうためにうまく人と恋愛をすることができなかった彼女が、今までの彼氏とは違いピュアな恋愛をしてくる龍斗にひかれていく様子はたまらない。
男慣れしているはずの女の子がめちゃくちゃピュアな恋愛しているのってなんでこんなにほほえましいのでしょうか(笑)
今までの彼氏では味わえなかった本当の恋を龍斗とともに存分に味わってくれ!
こういう作品ってヒロインの魅力のわりに主人公の魅力が弱かったりあまりにもネガティブ過ぎて、なんでヒロインは主人公に恋をしたのかわからないことが多いんですが、龍斗は比較的好感が持てる主人公で良かったです。
というのも、龍斗は自分が付き合っていることに自信が無くて周りからの視線を気にしてとあまり自分を出すことはなかったのですが、それでも決めるべきときはしっかり決めるというかネガティブが過ぎなくてうっとうしさが無かったんですよね。
気持ちはわかるけどそこは自信持てよ!!ってこともあまりなくストレスなくいちゃあまを楽しむことができました。
メインヒロインと主人公にたいする印象はこんな感じですね。
あとほかに出てきたキャラと言えば友人のニコルと二人と関係がある海愛の2人ですかえね。まずニコルなんですけどこれは最高の友人枠。ギャルで見た目は怖いですが月愛のことをほんとに大切に思っていることが感じられてよかったですね。
そして後半に出てきた海愛。彼女も恋をしらないがゆえに人から愛されることを望んでしまう少し悲しい少女。父親が大好きだったのに離れなければならず、苦しい思いをした過去を持っていました。彼女も龍斗の説得で行いを改め、そして龍斗に恋をしましたね。最後には面白そうなことも言っていて注目せざる負えないですね!
それでは今回はこの辺で。最後まで読んで下さった方ありがとうございます。